中華民国70年 厚さ約0.6cm

序文

近代において詩・書・画の三分野で卓越した才能を発揮した大師である溥儒（溥心畬）先生は、筆墨を用いて心の内を表現し、丹青（絵画）を通じて万象を捉え、「神は象中にあり、意は象外にあり」という境地に達しました。そのため、彼の作品はすべてが「詩中に画があり、画中に詩がある」ものであり、自然を師とし、天性の妙悟をもって独創的な境地を築きました。まさに上品にして至高の作品といえます。

溥儒（溥心畬）について
溥儒先生は名儒であり、字（あざな）を心畬、号を羲皇上人、または西山逸士と称し、清朝の貴族に生まれました。1896年（清朝光緒22年）に生まれ、1963年（民国52年）に68歳で亡くなりました。幼少期から母の教えを受け、経書や歴史を研究し、怠ることはありませんでした。

学問は理学から始まり、『学庸』（四書の一部）を学び、性理学を追求した後、漢学の古典『爾雅』や『説文解字』、さらには漢代の儒学や諸子百家の書を幅広く研究しました。その後、外国に留学し、ドイツ・ベルリン大学で天文学と生物学の博士号を取得しましたが、それを誇示することはなく、知る人も少ないままでした。

文学や書画を愛し、名山を巡って詩を作り、琴書（琴と書）を楽しむ生活を送りました。世俗の利害や名誉には無頓着で、淡々とした人生を歩みました。晩年には教師として後進を指導し、多くの著作を残しました。その中には『群経通義』、『四書経義集証』、『爾雅釈義経証』、さらには詩文や書画に関する20を超える学術著作があります。これらは士林（学者界）において高く評価されています。

詩について
彼の詩の境地は、清新で優雅なところは陶淵明に似ており、重厚で含蓄あるところは杜甫に似ています。また、幽静で淡遠な趣は王維にも通じます。たとえば、舟山にまつわる律詩「避秦詠舟山」は、

「古県臨滄海、城荒石壁存。青山連蟹嶼、白浪擁蛟門。
水落漁人少、烽嚴戍卒尊。天高驚木葉、況乃近黄昏。」
と詠み、非常に高い造詣と独自の風格を持っていました。

書について
彼の書法は、遠く山陰（王羲之・王献之の二王）を宗とし、唐の顔真卿や柳公権、宋の蘇軾や米芾に倣いました。楷書は成親王（永楽帝の子）の書風に似ており、行書は王羲之と米芾を融合させたものでした。王羲之の風韻と米芾の技巧を融合し、清新で天性に優れた筆使いを見せています。その書法は時代を超越したものといえます。

画について
山水画では、北宗（北派）を起点に、馬遠・夏珪を経て、李成や范寛といった大家の技法を遡り、その神髄を深く体得しました。筆墨の運用は多様で、後期には南宗（南派）の技法も取り入れ、潤いのある描写と力強い皴法（しゅんぽう：岩や山の表現）が融合し、独自の高妙な韻致を生み出しました。
人物画においては、気象は清新で自由闊達であり、古風な趣に満ちています。花卉（花や植物）の作品は多く水墨画で、奔放な表現を見せますが、単なる遊びとしての創作も多かったようです。

彼自身の言葉によれば、
「詩は書に勝り、書は画に勝る」
と述べています。そのため、彼の作品は一片の紙であっても、すべてが宝物とされています。彼の楷書は「衡山（呉廷翰）以来第一人」と称され、その評価は決して過大ではありません。

彼は1962年、台湾の日月潭教師会館のために楷書で長大な碑文を書きました。その原本は、台湾省教育庁の劉白如前庁長の寄贈により、国立歴史博物館に収蔵され、長期展示されて聖品（最高の作品）として位置づけられています。今回、この碑文を精密に印刷し、後進の学びの手本とするために公開することにしました。敬意を込めてこの序文を記します。

1981年8月15日 台北国立歴史博物館にて
何浩天 謹識

表紙小傷。ページ小黄ばみ。

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