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あいさつ
ここに、「パリのエスプリ 佐伯祐三と佐野繁次郎」展を開催いたします。
少年時代から交友のあったこのふたりは、画家としてずいぶん違った生き方をし、残した仕事 も異質なものです。 佐伯祐三 (1898-1928) は、 よく知られているように、パリの街の魅力に取りつ かれて結核の進行に屈することなく熱狂的にパリを描きつづけて印象深い傑作を数多く生み出し ながら、こよなく愛したパリで病死しました。 また佐野繁次郎 (1900-1987) は、 佐伯祐三の絵に 刺激されて画家を志しつつ、 文学やデザインの分野でもすぐれた仕事をし、 佐伯より10年ほどあ とにパリを体験して、生来の洒脱な感覚を磨きました。 そして戦後は、独特な人間像を表わしな がら個性的な絵画を描き続けました。
今回の展覧会では、さまざまな面で対照的なこのふたりの画家を取り上げ、 絵画と文字の関係 に寄せたふたりに共通の関心に焦点を合わせます。 その関心のあり方は異なりますが、 彼らの絵 画に現われる文字は、絵画の質と深く関わり合って、それぞれの絵画を改めて考えさせてくれるこ とと思います。とりわけ佐伯祐三の絵では、文字が絵画の要素として重要な鍵となっていますし、 佐野繁次郎は、文字が表わす言葉の意味も合わせて文字を絵画のなかでさまざまに使います。 そ うした点を見ることを通して、ふたりの絵画は新しい姿をもって私たちの前に現われることで しょう。
神奈川県立近代美術館は、1952年を始めとして幾度か丁寧に佐伯祐三の仕事を紹介し、この 情熱的な画家が世に広く知られていく契機を作るとともに、 数点の傑作の寄託を受けています。 また佐野繁次郎については、 100点に及ぶ貴重な絵画作品と資料の数々を収蔵して、この画家の 研究の中核をなしています。 こうしたことも今回の展覧会企画の背景となっています。 そうした経 験と積み重ねのうえに実現した本展が、ふたりの画家への理解をさらに深め、 作品を堪能する機 会となることを願ってやみません。
最後になりましたが、本展の実現に当たり、 佐伯祐三のきわめて貴重なコレクションを所蔵す る大阪市立近代美術館建設準備室、 和歌山県立近代美術館を始めとする所蔵家各位、 また、 佐 野繁次郎のご家族を始めとする関係者の方々に多大なご協力をいただいたことに深く感謝いたし ます。
2007年4月
神奈川県立近代美術館長
山梨俊夫

表紙小傷程度で特に目立った傷や汚れはありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。