昭和62年　226P

はじめに

菩薩とは悟りを求めて修行する人のことで、修行に励む釈尊の前半生あるいは前世の姿を原像とし、自己完成 (自利)と他者救済(利他)に立ち向かって邁進する求道者を、大乗仏教世界の人びとの師表として具現化したものであります。その造像の時期は仏像の成立とほぼ同期の紀元一・二世紀のインドに遡り、あたかも大乗仏教の興起という仏教史上の一大画期と一致し、その間に深い関係のあることを物語っています。

こうして菩薩像の造形は、インド以来大乗仏教圏の広い範囲にわたって多彩な展開をとげ、仏教美術史上の重要なテーマの一つとなって来ました。本展はこのような視点に立って、菩薩像の成立と東伝、大乗仏教の菩薩像の二部に分け、内外の優れた美術作品を通してその歴史的展開のあとを総観しようとするものであります。

奈良国立博物館においては昭和五十九年春に特別展「ブッダ釈尊」を開催し、多くの人びとの共感をえたものと確信していますが、今回その総編として大乗仏教の勇者「菩薩」をテーマとする特別展を開催しえたことは喜びにたえません。本展では日本国内の所蔵者各位からはもとより、海外からも優品を拝借することができました。 内外の関係各位の絶大な御厚意に報いるためにも、多くの方がたの御高覧を心から期待するものであります。

昭和六十二年四月
奈良国立博物館長西川杏太郎

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ、折れじわ。ページ小黄ばみ。もちろん読む分には問題ありません。24041

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。