2000年　110P

ごあいさつ

幼い頃に慣れ親しんだ昔話や絵本の原型とも言える絵巻や御伽草子は、室内で自ら手にとり鑑賞することからも、私たちにとって最も親密な感覚を抱かせる美術であるといえるでしょう。そこには人々の篤い志やささやかな悦びがさまざまな形で込められており、さらに当時の社会の世相や暮らしぶり が画面の中に明瞭に映し出されています。

当館の絵巻の所蔵作品には、重文の「善教房絵巻」をはじめ、「西行物語絵巻」などの物語・説話絵姿、「酒伝童子絵巻」「鼠草子絵巻」「藤袋草紙」といった御伽草子に類する絵巻などがあり、中世から 近世にかけての絵巻の展開をたどることができます。とくに室町時代から江戸時代前期に制作された 御伽草子絵巻は、恋愛物、英雄譚、発心譚、異類物など、多様な主題を網羅した、充実したコレクションといえましょう。また絵入本「かるかや」などは、素人の稚拙な筆致ながら浄らかな情趣をたたえており、現代人の心に深い感動を与えます。この展覧会では、久しく全貌の紹介が期待されていた当館所蔵の絵巻を中心にして、屏風、工芸品を併せて展示いたします。作品の中に生き生きと描き出 された人々の世界をお楽しみいただければ幸いです。

サントリー美術館

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ、ややしみ。ページ小黄ばみ。13811

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。