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「三島由紀夫とニーチェ」

青海 健



青海 健

三島由紀夫とニーチェ



戦後文学をイローニッシュに体現した

殉教の文学者ミシマの今日的意味とは何か？



ニーチェを召喚しつつ、=

島テキストの不可能性の源泉へ分け入る気鋭の力作評

第31回群像新人賞評論部門優秀作ほか四篤。

青弓社





小阪 修平

非在の海: 三島由紀夫と戦後社会のニヒリズム



「非在の海 : 三島由紀夫と戦後社会のニヒリズム」

小阪 修平





わたしの、そして多くのわたしたちの七〇年代の経験のなかで、もっとも困難だった課題は、自分が深い生を願えば願うほと、ぎゃくに現実を喪失し、自分自身の観念も相対化されさるをえないということであった。



七〇年代、わたしたちは一歩まちがえばとめともないニヒリズムの泥沼か、それとも党派的な条に転落する狭い尾根を歩いてきた。

あるいはわたしたちが一度否定した「現実」のもつ現実性に逆もどうしてきた。

ニヒリズムをどのように克服し、広い生に到るか、それは今でもわたし自身の課題である。



わたしにとって三島由紀夫とは極限的な挫折を意味している。

わたしたちがこの尾根を歩いているとき、迷いこんだ道は、

すべて三島によってあらかじめ地図がつくられていたようにも思える。

そして、三島は彼岸へと蒸発し、いなくなった。

むろん、わたしたちは、三島の先を歩かなければならない。



そうかんがえるとき、わたしは三島の霊魂がすぐ近くにさまよっているように思えてならない。





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