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ここに死体を捨てないでください

先ずは「ここに死体を捨てないでください」という人を喰ったタイトルに注目。突然の殺人現場に出くわしたために、死体を何処かに遺棄しようとする男女。そのあたふたぶりが序盤の見せ所ですが、あろうことかコントラバスのケースに死体を詰め込みミニクーパーごと底なし沼に沈めてしますのです。

子の死体が実は鵜飼探偵事務所を訪れるはずの女性であったことから、いつまでたっても訪れない依頼人に不信を感じた鵜飼たちは彼女の住む町を訪れます。この2つの別々のパートがクレセント荘（ペンション）で交錯しやがて連続殺人事件へと発展していくことで砂川刑事も参戦。事態はどんどん混乱の色合いを深めるのです。

誠にご都合主義的な展開で笑っちゃいますが、東川小説はトリックなどをあまり真剣に考えずに読み流すのが正しい読み方。最後に大掛かりな殺人方法に驚いてください。



密室に向かって撃て！

冒頭からドタバタ刑事コンビも登場しギャグやコントを絡めて物語が進行するためにゆーるい話かと思いきや、犯人探しや殺人のトリックには本格的なサスペンス味付けがしてあります。

いわゆる社会派ミステリとは一線を画すユーモアな文体がリーダビリティーを上げるのに役立っています。冒頭で警察の失態から模造拳銃が何者かに持ち去られてしまうという不祥事が語られ、一般市民誰もが拳銃を持ちうるという、日本ではとんでもない状況を作っているのが上手いですね。この拳銃によって連続殺人事件が引き起こされるのですが、１例目はホームレス、２例目は名門・十乗寺家の娘・さくらの花婿候補の一人。この２例目の殺人が衆人環視の中で行われた変則密室殺人事件なのです。

事件解決に向けて奔走する砂川警部と志木刑事の警察グループと、鵜飼・戸村の探偵グループ。その中で模造拳銃から発射された銃弾の数が、どうトリックに絡んでくるのかが焦点となってきます。

終始ふざけているようでいて、ミステリーとして決めるところは決める稀有な名作でしょう。