シテール島への船出
ドミニカ発行の切手にとりあげられているこの「シテール
島への船出」（1717年作）は、18世紀のフランス画家ジャン・アントワーヌ・ヴァトーの最も有名な作品です。ウァトーは庭園における上流社会の人々の優雅な集いの情景を好んで描き、「雅宴画（フェート・キャラント）」という新しいジャンルをフランス絵画に確立した画家でした。この作品もそのすぐれた一例で、ウァトー独特の甘くもの悲しい情感に満だされています。長らく「シテール島への船出」と呼びならわされてきたこの絵が、近年になってその題名が実は不適切なものであることが明らかになりました。というのは、画面で幾組かの恋人たちが集い語らっているこの島こそが女神ウィーナスが漂着したと伝えられる愛の島シテール島であり、彼らはいまここから日常の現実世界に再び帰ろうとしているところだからです。恋人たちの憂いに満ちた表情もこの説明によってご理解いただけることでしょう。今日この作品はパリのルーヴル美術館により所蔵されています。
画家の肖像は、フランソワ・ブーシェによるヴァトーの「自画像」の版画に基づいたものです。

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