万葉集がまるごとわかる本 完全保存版
吉田裕子
定価: ￥ 1200+税

#吉田裕子 #本 #生活／諸芸・娯楽

新元号「令和」の典拠となった「万葉集」は、奈良時代の終わりから平安の初めに完成した歌集で、約4500首が収められています。「万葉集」には、天皇、貴族から一般民衆まで、あらゆる人々の思い、感情、生活などから生まれた「万葉の心」が詰まっているのです。
それらの歌は時の隔たりを感じさせず、今なお共感できる部分もたくさんあります。もちろん当時ならではの価値観や風習に裏付けられた歌もあり、歴史に興味のある人にとっても興味深い歌集なのです。
万葉の心が凝縮された歌に触れることで、疲れた心を癒し、新たな活力が生まれることもあるでしょう。「令和」を迎えた今だからこそ味わいたい「万葉集」。この日本を代表する和歌集をわかりやすく丁寧に解説した1冊です。

✦『令和』を読み解く
令和の出典は、『万葉集』巻五に収録される大伴旅人の「梅花の宴」の序文。……、〈初春の令月にして、気淑(よ)く風和(な)ぐ〉の部分から引用されています。……。
梅花の宴とは、天平2年(730)正月13日、太宰府の旅人邸にて行われ、32首の梅の歌が詠まれた宴席のことです。当時、「遠の朝廷」といわれた太宰府は、九州の中心地。旅人はかの地に九州全土の長官・太宰師として赴任しており、配下の筑前守・山上憶良他、小野老、大伴坂上郎女などの歌人たちと筑紫歌壇と呼ばれたサロンを形成していました。
現代では、花といえば桜を連想しますが、万葉の時代は梅が中国から渡来した植物として珍重されていたため、桜より梅でした。特に白梅です。実際、桜の歌が約40首なのに対して、梅の歌は約120首が収められ、ウグイスや雪との組み合わせで詠まれた歌が多くあります。(P.4)


『万葉集』には、まるでオペラの二重唱のような、恋のかけ合い相聞歌がたくさんありますが、とりわけ有名なのが、女流宮廷歌人の額田王(ぬかたのおおきみ)と大海人皇子が交わした歌でしょう。
　あかねさす　紫野行き　標野行き
野守は見ずや　君が袖振る　　額田王

　紫の　にほえる妹を　憎くあらば
人妻故に　我恋ひめやも　大海人皇子

額田王は、天智天皇と大海人皇子(後の天武天皇)二人の寵愛を受け、二人のパートナーでもあった恋のヒロインとしても有名です。


美品