カラヤンがベルリン・フィルを率いていた絶頂期の録音。これらは、当時間違いなく世界最高のオーケストラだった力と確信に満ちた、ワーグナーの本当にスリリングな「血のにじむような断片」です。これらは「心地よい」ワーグナー演奏ではありません。むしろ、カラヤンは作曲家のディオニュソス的な側面を強調することを好みました。これは、ベルリン・フィルのような優れたアンサンブル以外では危険なアプローチです。
タンホイザーにより一般的な形式を知っている聴衆は、中間部の突然の「間違った方向転換」に驚かされるでしょう。なぜなら、音楽は突然、荒々しいバッカナールへと転じ、異国風のパーカッションが退廃的な雰囲気を盛り上げるからです。その後、遠くから女性の声が誘う、抑えきれない官能的な一節が続きます。
この刺激的な曲の前に、ディスクは、奮い立たせるような荘厳な「マイスタージンガー」序曲で始まります。次にタンホイザーが続き、続いて、有名なローエングリンの前奏曲 1 幕と 3 幕が続きます。第 3 幕の前奏曲は大騒ぎで、これほど男根的な音は聞いたことがありません。若きリヒャルト・シュトラウスがドン・ファンのホルン音楽のインスピレーションをどこから得たのか知りたいなら、 これ以上聴く必要はありません。ただし、壮大な第 1 幕の前奏曲には問題があります。BPO の弦楽器の音は、ここでは実に豪華すぎます (幽玄な冒頭が ピアニッシモと記されていることを考慮すると)。また、全体的に優れた録音であるにもかかわらず、ここでは音がむしろガラスのように不自然に聞こえます。演奏は素晴らしいテンポで、素晴らしいクライマックスへと盛り上がります。
一方、その後に続く「さまよえるオランダ人」 序曲は、まったく驚くべきもので、私がディスクで聴いたこの作品の演奏の中で、最も説得力のある演奏であることは間違いありません。指揮者とオーケストラは全力を尽くし、その結果はまさに、まさに驚異的です。
トリスタンの音楽にもほぼ同じことが当てはまります。プレリュードは、この音楽の抑えきれない情熱を完璧に表現し、耐え難いほど激しいクライマックスへと盛り上がります。これが、音楽ドラマ全体を「縮小」して機能させる唯一の方法であり、愛の死の最後の頂点は、ただただ恍惚としています。素晴らしい演奏、素晴らしい指揮です。解説より

ケースに小キズあり。