モーツァルト

①ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219『トルコ風』

②ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲

変ホ長調 K.364(320d)



ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)

キム・カシュカシアン(ヴィオラ)②

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ニコラウス・アーノンクール(指揮)

録音:1987年1月、1983年10月 ウィーン



鬼才クレーメルと古楽の旗手アーノンクールがウィーン・フィルとともに録音したモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番《トルコ風》では、作品の個性が極限まで際立ち、予定調和とは無縁のエネルギッシュな演奏が繰り広げられます。ヴィオラにカシュカシャンを迎えて録音された《協奏交響曲》も、ソリストと指揮者が互いに仕掛け、反応し合う刺激的なやりとりがなにより魅力的です。



第3楽章に当時流行したトルコ風の音楽を用いたヴァイオリン協奏曲の最高傑作の第5番、この世のものとも思えぬほどの美しさと深い悲しみをたたえた第2楽章で有名な協奏交響曲の2曲とも、パリの影響をたくみにとりいれた天才モーツァルトならではの流麗な音楽です。モーツァルト演奏に新風を吹き込んだ名手クレーメルとアーノンクールの共演は、この2曲の魅力を、洗練の極ともいえる至芸により、鮮やかに引き出しています。



協奏交響曲は、独奏楽器がオーケストラと渡り合う協奏曲とは違う性格を持ち、複数の独奏楽器がオーケストラと協調的に響きを作る性格を持つ。しかしこの協奏交響曲の独奏パートは高く評価され、今日ではヴァイオリン・ヴィオラの名手による二重協奏曲として演奏される傾向にある。華やかに上昇するヴァイオリン、静かに深い世界へ向かうヴィオラという2つの楽器の性格はうまく使い分けられ、華やかながらも必ずどこかに陰影を帯びたモーツァルトの芸術性がうまく表現されている。すでに作曲された5曲のヴァイオリン協奏曲と異なり、第1楽章と第2楽章にモーツァルト自身のカデンツァが残されているほか、技術的な面においても格段に高度になっている。



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