ショパン

①ピアノ・ソナタ 第２番 変ロ短調 作品35《葬送》

②幻想曲 ヘ短調 作品49

③舟歌 嬰ヘ長調 作品60

④子守歌 変ニ長調 作品57

⑤ポロネーズ 第７番 変イ長調 作品61《幻想ポロネーズ》

⑥アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22



ヴィルヘルム・ケンプ（ピアノ）

録音：1958年３月ステレオ



20世紀を代表する巨匠ピアニストのひとりであるケンプは、ベートーヴェンやシューベルトなどドイツ・オーストリア系の作曲家の作品に数多くの名演を残していますが、ショパンは比較的珍しいレパートリーです。このディスクはステレオの初期にケンプがデッカに録音した３枚のショパン・アルバムから選曲されたもの。そしてその選曲がとてもいい。後期の大曲中心の充実した内容。甘美な旋律を、彼ならではの解釈で表現している味わいを持つ、濃い演奏です。



はっきり言ってケンプのテクニックはショパン向きではない。最初の変ロ短調ソナタの序奏はさすがに重厚で素晴らしいが、二度目の第一主題でミスタッチの連続。はらはらした後の第二主題がまるで雨後の虹のような美しさ・・・というように「手に汗握る」ような「名演（迷演？）」です。第二楽章スケルツオも凄みはないが踏みとどまり、有名な「葬送行進曲」と異常に短い混沌フィナーレはさすがに素晴らしい完成度。「幻想曲」や「子守唄」などは滋味溢れる演奏だ。他の「幻想即興曲」「舟歌」などドイツ的ショパンの宝玉。ともすればまとまりの失われがちなショパンの曲ですが、ケンプは主旋律をはっきりと綺麗に歌わせ、曲本来の美しさを私たちに教えてくれるのです。面白いです。



当然ながら今風のショパンを期待すれば失望します。第2番のソナタを聴けばそれを強く感じます。 年取ってテクニックが落ちているのではないかとさえ思える点もありますが（録音は60歳台の前半）、他の曲にはそのようなことはないことから、これがまさにケンプのショパンであることが分かります。内省的なケンプの特性も感じられ、静かに聴く事ができ、併収録の5曲とともに「最高」の演奏です。



国内盤【廃盤】帯無し、盤面傷無し　9



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