マーラー

交響曲第5番 嬰ハ短調



指揮：キリル・コンドラシン

ソビエト国立交響楽団

録音：1974年ステレオ



全集は完成されなかったが、２番・８番の除いた選集が大人気のコンドラシンのマーラー。中でも５番はコンドラシンの個性が良く出ていて過度にロマン的ではなく、アダージェットなど爽やかな涼風を感じさせる。しっかり音楽が心に届くアナログ優秀録音。



マーラーは好きです。旋律が美しいし、演奏家によって驚くべきほど違いが出るのも興味深い。「コンドラシンのマーラー」とねれば「おっ！」と思えるし、この第5番は普段指揮しないソヴィエット国立響。看過できません。



これは相当な違和感溢れる演奏です。とくに第1楽章から、なんかへん。トランペットの音色がフツウじゃない。アクがあって、強烈で全体の響きに溶け合わない。すべてのパートが独自の色合いでバラバラのような印象。この曲特有の官能性とか、深い影のある甘さとか、そんな世界とはまったく異なる硬派の音楽。



第2楽章からはもう少しアンサンブルにまとまりが出てくるし、テンションの高さが良い方面に向かいつつある。それにしても、金管の洗練されない無骨なチカラ強さは異形で超個性的。ホルンのヴィヴラートを先頭にして、怪しい響きがゴロゴロ続きます。



「アダージエット」は独自の解釈らしくて、ソロの弦楽器が出てきます。むせ返るような雰囲気を求めたいが、アンサンブルの肌理が粗くて、濃密な雰囲気ではない。でも、呼吸が深くて揺れ動くこと、アクセントが個性的であることで、かなり楽しめる演奏です。



終楽章もなんかへん。オーケストラがちっとものっていないというか「もう帰ろうよ」みたいな感じもあって、コンドラシンが叱咤激励すると突如金管が爆発する、といった風情。アンサンブルはギクシャクとして、オーケストラがこの曲に慣れていないのかも知れません。こういった硬質な音色を好む人はいるだろうと想像されます。



全体に早めのテンポで、あか抜けない演奏振り。ソヴィエット国立響のサウンドが良く理解できる演奏でもあります。許容範囲が広く、違いを楽しめる方には、相当面白い演奏だと思います。



輸入盤【廃盤】盤面傷無し 14



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