ブルックナー 2枚組

交響曲第8番(ハース版)



指揮:朝比奈 隆

大阪フィルハーモニー管弦楽団

録音:1994年7月24日 東京サントリーホール



音楽評論家:宇野功芳氏

「大フィル東京公演は朝比奈のベストのブルックナー8番になった。何よりもオーケストラの状態が非常に良く、そうなると長年の手兵だけに指揮者の息遣いを、本当に生きた、しかも熟した響きで体現してしまう。朝比奈の気迫もたいへんなものだったが、それが純化され切った姿で表出され、神々しいまでの至高の名演が展開されたのである。」



朝比奈隆が舞台に出て来てから最後の拍手まで、インターバルまでもノー・カットで収め、当日が{特別}だったことをうかがわせる。その通り、演奏はこれまでの朝比奈の第8の中でベスト。熱と力、威厳と風格に満ちた記念すべき名演。透徹した意思力が尋常ではなく、それが終始貫徹する驚異的演奏。朝比奈の同曲演奏の中でも、最も素晴らしいもの。ファン以外も必聴。日本の指揮者とオーケストラでこれだけのブルックナーの名演が残されたことを大いに誇るべきだと思います。録音も最上級です。



ブルックナーの交響曲のうちでも、第９番と並んで至高の名曲といわれているこの第８番は、名盤が群雄割拠とひしめく。ブルックナーは、武骨で愚直、不器用な作曲家であり、ブルックナーが産み出した音楽も、ブルックナーその人そのもの。そんなブルックナーとその音楽に、朝比奈隆とその演奏は、明らかに重なって見える。大阪フィルには、たしかに、ウィーン・フィルのような輝かしく、艶やかな音色はない。しかし、そのいぶし銀のようにくすんだ音色こそが、むしろ、ブルックナー向きと思わせるところがあり、朝比奈は、そんな大阪フィルの音色をベースに、武骨で愚直だが、スケールが大きい演奏を繰り広げており、武骨で愚直な音楽の中から滲み出てくる純化された崇高な美しさと、神々しいまでの荘厳さには、「これぞ、ブルックナーの醍醐味！」と思わせるだけのものがある。



朝比奈隆は2001年に逝去、宇野氏も故人となりブームも遠く過ぎ去った。しかし、当盤を聴いての『感動』は現在進行形です。　　



国内盤、帯無し、盤面傷無し 21



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