竹取物語・伊勢物語　田辺聖子
集英社文庫

不思議な伝奇ロマンと華麗な恋の物語を田辺聖子が軽妙なタッチで再現。


『竹取物語』は、竹の中から誕生した美少女かぐや姫をめぐる求婚譚を描いたわが国の最初の物語。永遠の女性に憧れる思いを描いて、永く愛読されてきた。『伊勢物語』は、一代の色好みである在原業平の奔放にして哀切な恋愛を描いた歌物語。著者の訳文は、原文の雅さをよく伝えながら、ユーモラスな味わいを出して、現代の小説を読むように楽しめる。

〈帯　より〉


紫式部は『竹取物語』を、「物語のいで来はじめの祖(おや)」といった。文学の源流はほそく、はるかな古代であるけれども、それはいまだに尽きぬエネルギーを、私たちに与えつづけてくれるといってよい。
さてもうひとつの日本文学の源流に『伊勢物語』がある。

内容は主人公の元服にはじまり、死で終る、いわば男の一代記といえよう。そして本文の文章と歌から、その男は在原業平に擬せられている。業平一代の恋と友情と反逆の歌物語、といえばよかろうか。

業平はハンサムで上品でエレガントな紳士であり、性格は自由闊達で気ままであった、官吏としての教養であるかたくるしい学問はできるとはいえないが、和歌を作らせると上手だった、……というもの。

〈あとがき　より〉


美品