日本防衛を総合科学的に取り扱った待望の書が出た。論理は透徹し、資料も精選され豊富だ。
日本人は、古来、軍事的音痴なうえ、戦後三五年の空白がきた。最近やっと真面目に防衛問題が論じられ始めたが、学者・官僚・ジャーナリズムの議論はナンセンスだ。軍事的・経済的・政治的・社会的システム分析を欠き、フィーリングの告白か生のデータの羅列にすぎないものが大部分だからである。
本書の出現は旱天の慈雨といえる。特に米ソ軍隊の崩壊、中国軍の前近代性の指摘は圧巻である。
自衛隊は世界一強く、日本防衛は経済的責任の完遂にあり、ひいてはそれが世界平和に貢献するというのが結論である。国際政治という怪物の前には、矛盾も難点もまだ多いが、私自身、この著者の方法と論理を大いに活用している。


昭和56年1月30日　第5刷発行
NON BOOK 定価680円