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百田自身のフィールドである文学界の闇、そしてそれを支える出版業界の現実が赤裸々に述べられています。多くの出版社が不況であえぐ中、賞レースを画策しヒット作を生み出そうとする姿は悲壮感までもが漂う笑えない姿で、漫画部門や雑誌部門が売れているおかげで私たち読書ファンが小説を読むことができるのですね。そんな出版不況のただなかでも金を生み出す自費出版部門。印刷屋に原稿を持ち込めば、数10万円でできる自費出版ですが、主人公牛河原の会社丸栄社では数百万円で素人の駄文を出版します。そこにはプロの編集者による指導や校閲、全国書店への販路などの料金が入っているとはいえ、いくらなんでも高すぎます。それを牛河原の舌先三寸で、割高自費出版へと導く例が序盤で掃海されます。半ば詐欺に近い手法で100万円単位の出費をするのは、自分史を残したい高齢者、自分は天才と信じるフリータ-だったり、自分の教育論が正しいと信じ込んでいる主婦。みんな他人が書いた小説（活字）は読まないのに、自分では誰も読まない文章を残したくて仕方ないのです。そして彼らの出版という夢をかなえるために詐欺まがいの自費出版社は大繁盛。

しかし好事魔多し、この手法をまねた後発の狼煙社が大幅なダンピングをして丸栄社を脅かします。経営が危うくなった丸栄社はライバル狼煙社を蹴落とすためにマスコミを利用して…このあたりの展開も元TV人だった百田は詳しいわけで、最終的には詐欺のような牛河原は実はいい人で少し泣かしてくれます。