2000年発行 全152ページ

状態：中古 概ね良好



■本書序文■

アイヌ民族は、かつては北海道を中心にサハリン南部・千島列島などに居住し、

独自の言語を有し、「ユカラ」などの口承文芸、「イオマンテ」熊の霊送りに代表されある儀礼、

あるいは特有のアイヌ文様などにみられるような豊かな文化を発展させてきました。



しかし、近世・近代における受難の歴史の中で、その文化的特色の多くが失われ、

アイヌ文化は存亡にかかわる危機的な状況に追い込まれました。



そのなかで、アイヌ文化を後世に残すべく研究と生活用具の収集に生涯をかけたのが、

馬場脩氏や児玉作左衛門氏であり、その民具収集の集大成といえるものが、

今回ご紹介する馬場コレクション、児玉コレクションであります。



両コレクションは、大正から昭和におけるアイヌ文化を知る上で、

非常に貴重な文化遺産ということができます。



今回の展示は、平成9(1997)年5月、アイヌ文化の振興等を行い

アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現と、

わが国の多様な文化の発展に寄与することを目的に制定された

「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」に基づき、

アイヌ文化の振興を図る事業の一環として、

アイヌ文化に対する国民の理解を深めていただくために行われるものです。



日頃、アイヌ文化に触れることの少ない中国地方や中部地方において、

こうした展覧会が開催されるのは初めてのことで、誠に意義深いものがあります。



本展覧会を通して、一人でも多くの方々にアイヌ民族が育み伝えてきた文化をご覧いただき、

その素晴らしさを実感していただければ幸いであります。