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こんなに働かない探偵にははじめてお目にかかった。探偵なのに捜査も推理もしない。貴族でありながら道楽で探偵をやっているその人は“貴族探偵。そんな設定ですが事件にはきちんとトリックがあって本格推理小説です。で、だれが事件を解決する価値えば「貴族探偵」の使用人である、「執事の山本」「メイドの田中」「運転手の佐藤」という面々。



貴族探偵

貴族探偵は“自分に解決できない謎はない”と事件現場に乗り込むのですが、実際に事件が起きた経緯、動機、犯人あばきなどは3人の使用人の口から語られ、貴族探偵何してるの？ということになるのです。「貴族探偵」いわく、「雑事は使用人に任せておけばいいんだよ」と言うことらしいです。ここまで書くと一見ユーモアミステリ小説のように見えますが、中身はなかなかしっかりしたトリックを準備していて、特に最終章などは３人の容疑者が全員殺害されてしまうというなかなか斬新で凝った謎を準備してくれており、うならされます。



貴族探偵対女探偵

本作では女探偵・高徳愛香を登場させての推理バトルを繰り広げます。女探偵が行く先々に何故か都合よく貴族探偵が現れ、何故か都合よく事件が起き、何故か同様のパターンで展開するスタイルには違和感満点ですが、ロジカルに推理を重ねて犯人にたどり着く点は本格推理小説です。更に高徳愛香の推理を毎度貴族探偵がひっくり返す多重解決の形をとっており、読者を楽しませてくれます。