《品切稀少本》
ヨーロッパ大陸の哲学
Simon Critchley / 佐藤 透
定価: ￥ 1540

#SimonCritchley #佐藤透 #本 #哲学

大陸＝ヨーロッパと英語圏の間に歴然と存在する文化的分裂．哲学もまた，大陸哲学と分析哲学とに乖離し，党派主義に毒されている．著者はカント以後の理性の危機という主題に焦点を当て，この問題の大陸側からの素描を試みる．そして哲学が，分裂を超えて，知を愛し生きる意味を問う，本来のあり方に立ち返る道を探求する．

いまや相互に対話が成り立たないほどに隔たってしまった大陸哲学と分析哲学．「知恵を愛する」という本来の意味は忘れ去られ，知識のみをひたすら追究しつづけた結果，一方では科学主義，他方ではその反動から非明晰主義に陥る危険を抱えている．このギャップを埋めることは可能なのか？　本書は批判・実践・解放，ニヒリズムなどの鍵概念を手がかりに大陸哲学を素描し，科学主義でも非明晰主義でもない第３の道による哲学再建を提唱する．



■ちょっと立ち読み

「大陸哲学」の手頃な入門書を期待して本書を手に取った読者は，目次を見ていささか戸惑いを覚えるに違いない．本書のどこを開いても，お目当ての現象学や解釈学，構造主義やポスト構造主義に関する初心者向けの解説は見当たらないからである．つまり，本書の主題は「大陸哲学」そのものにではなく，むしろ「大陸哲学と分析哲学の対立の克服」に置かれている．その意味では，本書は「羊頭狗肉」の解説書との批判を甘受せねばならないであろう．しかし，クリッチリーが羊の頭を掲げて商っているのは，狗肉ではなく牛肉である．「大陸哲学」の看板につられて店に入った読者は，大陸哲学という牛肉料理のみならず分析哲学という魚料理をも賞味することができ，さらに両者の対立の起源と理由を明らかにするドレッシングのきいたサラダ，おまけに対立の克服を示唆するデザートまで供されるという幸福を味わうことができる．フルコースを食べ終えて，コーヒーに手を伸ばす頃合には，読者の頭の中には明瞭な現代哲学の見取り図が描かれているという仕掛けになっている．本書を羊頭狗肉ならぬ「羊頭牛肉」の優れた現代哲学案内と呼ぶゆえんである．
（本書解説より）




美品