1995年に平凡社の「絵は語る」シリーズの一冊として出版された本書の「旧版」は、出版されるや否や、美術史界に大きな衝撃を持って受け止められました。神護寺に伝わった、かの「源頼朝像」（教科書などにも掲載され、誰もがそれを疑っていなかった）の像主が、実は頼朝ではないのではないか、制作年代も室町まで下がるのではないかという仮説を、徹底した調査研究をもとにして提出したのでした。その旧版にそれ以降の議論の展開を追った新論を加えて出されたのが、この平凡社ライブラリー版（新版）ということになります。2006年の初版です。



本論の提案に対して、旧来の立場を守る美術史家たちもいますが、米倉説を支持する人たちも多く、現在ではこの像そのものが不安定な位置にいます（個人的には、米倉説はかなり説得力があると思います）。



いずれにしても、日本美術史に関心のある人にとっては、一度は読んでおかなければならないものと思います。ほぼ新品のままに保管されていた一冊で、帯もそのまま、平凡社の新刊案内と栞も挿入されたままです。カヴァーはグラシン紙に包まれて保護されています。どこにも目立つ傷や汚れや書き込みはありません。写真でご確認ください。



#米倉迪夫　#源頼朝