篆書体（てんしょたい）による円形の底款「周其能制」、蓋裏に落款「其能」のある宜興紫砂壷（ぎこうしさこ）、容量約４０ｃｃの小さな茶壷（急須）です。

注ぎ口辺り、蓋、蓋摘みには、短い梅の枝や緑色の梅花・蕾の飾りがあしらわれ、持ち手は竹でしょうか。

丸みのある紫砂壺とは少し形状が異なります。形状、大小、色合いなど多種多様な宜興紫砂壺があり、それぞれに名称が付けられているようです。



出品紫砂壺の陶芸家「周其能（チュウチーノン）」氏は、ネット情報から宜興紫砂壺の工藝師。経歴は不明でした。

調査時、表題「宜興紫砂一廠・碗梅・張洪芬」の美しい紫砂壺が見つかり、宜興紫砂工場で公式生産された、壺名「碗梅」、女性陶芸家「張洪芬」氏の手によるもので、容量は３５０ｃｃでした。出品紫砂壺は、はるかに小さなものですが、「張洪芬」氏の「碗梅」のように、梅飾りのある蓋付碗の形状の紫砂壺です。



製作時期（経年）は不明です。胴部分などに褐色の変化が見られますが、経年によるものかどうかは分かりません。壺内部、蓋裏なども含め目立つ汚れはほとんど見られずキズや欠け、ひびなどの傷みもほぼありません。水漏れのないことは確認しています。



大きさは概寸で、高さ（蓋含）５．５ｃｍ、横幅（持手～注口）９．５ｃｍ、口径３．５ｃｍ、底径４ｃｍ、重さ約６５g、容量約４０ｃｃです。



通常目にする丸みのものとは一風変わった梅飾りのある蓋付碗に似た形状の小さな宜興紫砂壺です。コレクションに加えていただく、或は、洗浄などの手入れをしていただいた上で茶器として使っていただければ幸です。