《稀少本》
ギリシア神話テーバイ物語　
Ｒ.L.グリーン/真方陽子
ちくま文庫
定価 ¥ 600

ギリシア神話テーバイ物語美と愛の女神アプロディーテーが娘ハルモニアーの結婚祝いに贈ったのは、あらがいがたい欲望をかきたてる、魔法の頚飾りだった。妖しい光を放つ頚飾りはその後身につけた者すべての欲望をかきたて、数々の悲しみをもたらしてゆく。そして、テーバイの都にも禍いがふりかかっていくのだった―。ギリシア神話の中でも名高いテーバイの英雄伝説を簡潔で美しい文体で描いた名作。本文庫のための初訳。

この本の目次
第１章　イーオーの物語
第２章　エウローペーの誘拐
第３章　カドモスとハルモニアーの
　　　　結婚
第４章　ディオニューソスの誕生
第５章　ディオニューソスの帰還
第６章　アムピーオーンとゼートスの
　　　　技くらべ
第７章　オイディプースの宿命
第８章　テーバイを攻める七将
第９章　アンティゴネーの悲劇
第１０章　ハルモニアーの頚飾り


…、テーバイ伝説は、詩人と悲劇作家たちに極めて重要な題材を提供した点において、トロイアーをめぐる伝説と同じくらい、あるいはそれ以上に豊富な内容を持っています。『イーリアス』に相当するテーバイの物語は現存しませんが、かつてはホメーロス自身に帰せられていた『テーバイス(テーバイ物語)』という叙事詩がありました。この作品については、紀元後175年頃に『ギリシア案内記』を著わしたパウサニアースが、「『イーリアス』と『オデュッセイア』を別にすれば、わたしは『テーバイス』をほかのどの詩よりも高く評価したい」と述べているほどで、失われたことは非常に残念であるといわねばなりません。
〈序　より〉

オリュムポスの神々と人の子らとの交わりが、未だ自由であった頃のこと―神々の王であるゼウスは、英雄たちの祖先となるよう定めた者に、うるわしいギリシアの土地を分け与えておりました。というのも、後のちその英雄たちには、名高い都市を築くことが運命づけられていたからです。
………
〈第１章「イーオーの物語」より〉