【野性時代フロンティア文学賞】罪の余白 芦沢央
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罪の余白
娘の転落死は自己か自殺かそれとも殺人か?加害者、被害者、そして復讐者それぞれの圧倒的な心理描写であぶりだす事件の顛末は読者の心を鷲摑みします。
名作さまよう刃(東野圭吾)に代表される父親による復讐譚は救いがなくて苦しいものの、主人公に没入できる分印象も深い。
冒頭で教室のベランダから転落しつつある女子高生・安藤加奈の独白が描かれ、この死亡が自殺ではないことが読者には知らされます。学校はこの事件を自殺として片付けますが、実はその背後にはいじめ問題があり、父親をはじめ、イジメた当事者たちなど登場人物の心情が執拗に掘り下げられていて、ラストの落としどころはどうなるのかど読者はずっとドキドキです。
美人で将来芸能人になることを夢見ているいじめも張本人木場咲とその取り巻きで一緒にいじめをしていた新海真帆はいじめの証拠となる日記の存在が怖くて相がありません。加奈の父親に接触し、自宅に侵入して日記を捨てることを計画しますが、これは慈雨は父親が仕組んだ罠でした。これを逆手に取ることを考える咲はさらなる犯罪を犯そうとします。しかし決行時に予期せぬアクシデントが起きて…。
本作が「小説として上手い」のは、父親が、ベタ(闘魚と呼ばれる熱帯魚)の水槽の中での殺し合いを見つめるシーンを挿入しているところです。教室の中で引き起こされているいじめのメタファーとして使われるこのシーンが “良いお父さん”が憎悪に蝕まれていく過程をわかりやすく表現しているのです。デビュー作としては出木杉の芹沢さんの名作です。
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罪の余白
娘の転落死は自己か自殺かそれとも殺人か?加害者、被害者、そして復讐者それぞれの圧倒的な心理描写であぶりだす事件の顛末は読者の心を鷲摑みします。
名作さまよう刃(東野圭吾)に代表される父親による復讐譚は救いがなくて苦しいものの、主人公に没入できる分印象も深い。
冒頭で教室のベランダから転落しつつある女子高生・安藤加奈の独白が描かれ、この死亡が自殺ではないことが読者には知らされます。学校はこの事件を自殺として片付けますが、実はその背後にはいじめ問題があり、父親をはじめ、イジメた当事者たちなど登場人物の心情が執拗に掘り下げられていて、ラストの落としどころはどうなるのかど読者はずっとドキドキです。
美人で将来芸能人になることを夢見ているいじめも張本人木場咲とその取り巻きで一緒にいじめをしていた新海真帆はいじめの証拠となる日記の存在が怖くて相がありません。加奈の父親に接触し、自宅に侵入して日記を捨てることを計画しますが、これは慈雨は父親が仕組んだ罠でした。これを逆手に取ることを考える咲はさらなる犯罪を犯そうとします。しかし決行時に予期せぬアクシデントが起きて…。
本作が「小説として上手い」のは、父親が、ベタ(闘魚と呼ばれる熱帯魚)の水槽の中での殺し合いを見つめるシーンを挿入しているところです。教室の中で引き起こされているいじめのメタファーとして使われるこのシーンが “良いお父さん”が憎悪に蝕まれていく過程をわかりやすく表現しているのです。デビュー作としては出木杉の芹沢さんの名作です。