①ベートーヴェン

　ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調op.27-2「月光」

②フランク

　前奏曲，コラールとフーガ

③ブラームス

　パガニーニの主題による変奏曲op.35



エフゲニー・キーシン（ピアノ）

録音：1997年8月



キーシンが25歳のときに録音した名盤。この3作品にじっくりと時間をかけて取り組んだ跡がうかがえる、充実した演奏である。磨きぬかれたテクニックや、幅広い表現力、鋭い集中力が発揮され、各曲が実にドラマティックな展開を見せる。かつての神童も26歳、新たな地平に歩を進めつつあることを示す演奏。



キーシンはクセのあるピアニストではないだろうか。それは、この「月光」の3楽章にもよく表れている。ケンプの冷徹な弾き方やポリーニの規範ある抒情性に対して、出だしは何かゲーム音楽か映画音楽を聞いているかのような、駆り立てる速さと力強さで始まる。彼の演奏は他の演奏家よりも低音がよく響いてくるように聞こえる。そして、手応えを確かめるかのように所々でタメがある。好き嫌いはあるだろうが、キーシンの演奏に慣れてくるとハマる。それが無くてはつまらなく聞こえてくるのである。フランクとブラームスの出来は「月光」よりもさらに素晴らしい。「月光」が素晴らしくない訳ではないが「月光」を演奏するピアニストは多い。フランクのフランス作曲家ならではの、音の飛び方。パガニーニの天才的な曲の速さ。キーシンの低音の力強さと高音の速さが、それらの曲をとてもロマンチックに感じさせる。フランクもブラームスも中毒になる演奏である。



フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」、この作品を愛したアルフレッド・コルトーは、「これは全く天才の産物であって、もともと厳格な形式を柔軟にし、人間的なものにし、元来の威厳を損わずに、感動的な力と内省的な感情を付与している」と絶賛した。「前奏曲とフーガ」という確固たる形式の中に「コラール」を配した発想は天才的としか言いようがない。そこから想像力をかき立てるような音楽がとめどなく溢れ出てくる。その喚起力があまりに強いため、耳を傾けているだけで遠い世界へ連れて行かれる感じがする。奈落の底へ落ちていくような感じ、暗い曲が好きな方にはオススメです。



国内盤【見本盤→音質は通常盤と同じ】6

帯無し、盤面傷無し、プラケース少しすれあり



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