30年近く前に北見の斜里町の地元博物館が自らまとめ上げた知床地方に関する交通遺産、鉄道計画、馬車鉄道、廃止線跡、鉱山の歴史、農業の発展、開拓と農業遺産、歴史建築物に関して詳しく、かつ分かりやすくカラー写真を多用してまとめ上げたブックレット。



特に交通に関する記載が豊富。

駅逓時代、海運から交通への移行、その後の発展に関する特筆は、史料が少なく実態がほとんど知られていない「北海道殖民軌道(馬車鉄道) 斜里線（斜里～知布泊 間）」に関する現役時代の写真。



また、この地方の数少ない独自路線であった国鉄根北線は、開業当時の地元新聞記事をはじめ、あの第1幾品川橋梁が見事に全て繋がっていた時代から、国道拡張により真ん中が削り取られる工事が実施されている途中のレアな姿、斜里～越川間が現役時代だった頃のレールバスやSLの様子も伺えます。



特に越川橋梁（第一幾品川橋梁）については歴史建造物(のちの北海道遺産)としての稀有なアーチ橋として、同じ構造を持つ道内他路線の戸井線（未成線）や士幌線の同アーチ橋梁群も含め、現地の歴史書物や写真とともにページを割いて取りまとめ。



そして鉄道マニアにはほとんど知られていない、知床ウトロにあった硫黄鉱山の坑内に眠る2本の軌道跡。カムイワッカの滝の浜辺に敷設された人力トロッコ軌道に積まれた硫黄が船積みで出荷される様子など「鉄路はなかった」とされてきた、北の最果て知床半島の先端部にも鉄路が実在したという興味深い内容が収められています。



その他、栄えていた戦前の斜里町の街並みや、歴史的建造物の紹介。開拓期からの工業遺産、農業遺産についても写真と共に紹介。見どころが多い1冊です。



1998年 斜里町立知床博物館 (再販版) 48ページ 17×17cm オールカラー



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