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死体を買う男

　冒頭から双子の兄が首つり自殺。しかも死体が見つからない。こいつ絶対生きてるし、双子の弟が仕組んだトリックに違いないと、推理小説ファンとしてはかなりげんなりした展開で始まります。しかしいろいろ凝ったところがあり、まず探偵役として萩原朔太郎と、江戸川乱歩をリクルートしている点。面白いことに推理（探偵）小説の草分けである乱歩より、詩人・朔太郎の方が明晰であるという設定です。第2に本小説には「白骨鬼」という作中小説が主幹として存在しており、この小説の中の事件と、現代の物語を上手くリンクさせている点です。読者は「白骨鬼」を楽しんで、さらにこの小説を書いた現代の作家の物語と2粒楽しめる仕組みになっているのです。

「白骨鬼」の推理トリック自体は古典的ネタに終始しているのですが、現代の物語とリンクさせることで結末が2転３転するという構造で、さすがは自身が推理小説ファンの歌川作品だなぁと感心させられます。



さらわれたい女

便利屋に依頼に来たのは「私を誘拐してください」という美貌の社長夫人・小宮山佐緒理。彼女は夫の愛を確かめるため狂言誘拐を依頼してきたのです。金に困っていた便利屋は依頼を受けて彼女を偽装"誘拐"した後、今は旅行に出ている彼女の友人の部屋に隠れさせるのです。そして"救出"されたあとの辻褄を合わせるためのシナリオを描くのでした。便利屋は計画通りに身代金を手に入れ、小宮山佐緒理を解放しようとアジトに向かうのですが、そこで横たわっていたのは彼女の死体。

狂言誘拐で匿っていた女性が殺されたと言う悲喜劇に便利屋は危機に陥ります。このままでは自分が誘拐殺人藩にされてしまうのです。彼女を殺したのは誰か、その目的は何か？便利屋は反撃に出るのですが…