チャイコフスキー

交響曲 第6番 ロ短調 作品74≪悲愴≫



指揮：カール・ベーム

ロンドン交響楽団

録音：1978年12月



ベームによるチャイコの「悲愴」。しかもロンドンsoとの録音という珍重盤。最晩年のベーム特有の、何かふっきれたような自在さが表現にあふれており、オケものびのびとしている。聴いていると心がゆったりとしてやすらぐ滋味を感ずる名演。スラブの憂愁も哀愁もないが、チャイコフスキーが目指したドイツ音楽の姿かたちがここにはある。ベームならではのチャイコフスキー像。



ベームが晩年にロンドン交響楽団と、ドヴォルザーク、それにこのチャイコフスキーの交響曲を録音したことは、当時のファンにはちょっとした驚きだったに違いない。ベームを愛好していた人は「最後まで、チャイコフスキーやドヴォルザークは録音しないでほしかった」と言っていたし、そういう感覚を持った人は、それなりにいた。しかし、確かにベームがチャイコフスキー『悲愴』をスタジオ録音したのは当盤が唯一なのだけれど、決して演奏会で一切取り上げなかったというわけではない。これまたちょっと有名なディスクで、1971年にベームがチェコ・フィルを指揮したチャイコフスキー交響曲第4番のライヴが、オルフェオからリリースされており、素晴らしい熱のこもった演奏で、ベームが決してこの作曲家の扱いに苦慮していたわけではないことが伝わってくる。さて、当盤である。いろいろ賛否のある演奏であるが、ベームのスタイルはたいへん浪漫的。激しいテンポの揺れ、性急な切迫感を演出し、その一方で、濃厚なカンタービレを湛える。洗練とは裏腹といいたいほどの豪壮さで、クライマックスで踏み込む老ベームの息遣いが伝わる様なパワー。フレーズの扱いにも、ベーム節とでも呼びたいような個性がある。確かに細部の乱れは散見されるのだけれど、この時期にベームがこれらの録音を遺してくれて、とても良かった。これはやはりベームでなければ振りえないチャイコフスキーだろう。そういった希少性とともに、音楽フアンの好奇心を、存分に刺激させてくれる録音となっている。



国内盤【廃盤】帯付き、盤面傷無し11

開封済みですが新品に近い美品です



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