モーツァルト 4枚組

ピアノ・ソナタ第1番〜第18番

幻想曲 K397 & K475



グレン・グールド (ピアノ)

録音:1965年〜1973年



グールドが10年の歳月をかけて完成した全集。テンポは第11番Ｋ331《トルコ行進曲付》では著しく遅く採られ、逆に第１番Ｋ279の終楽章などでは非常に速いなどユニークそのもの。強弱やフレージングも非常に独特ですが、どれも各声部・各音型を明確に処理するためのもので、ほかとは一味も二味も異なる、全く普通じゃないモーツァルトを聴かせてくれます。 「バッハはまともに弾いているのに、モーツァルトでは何故こうなるの？ 」とおっしゃる方もあると思いますが、だからグールドは魅力的なのです。



ファースト・チョイスには不向きな全集です。演奏は極度に遅かったり、やたら早過ぎたり。でも軽快なソナタは小気味よく、1音1音粒が揃って聴こえます。グールドは初期のソナタが大好きだったようで、初期の曲は丁寧に愛着を込め弾いています。後期のソナタは演奏にバラつきがあり、好みが分かれる所。個人的に秀逸なのは、11番の第1・3楽章、8番の第1楽章、12番の第2楽章。特に12番の第2楽章は、モーツァルトの心が宿っています。虚ろぐ不安な感情と高鳴りを、見事にピアノで表現し盛り上げます。左手の伴奏がとても素晴らしい。グールドという奇才と同様、聴くのに咀嚼が必要な全集です。



これまで多くの賛否両論の議論を巻き起こしてきた問題作です。原因はその演奏解釈の過激さにあります。グールドは伝統的な解釈をことごとく無視し、まるでモーツァルトのソナタを「素材」として扱い、全く別の音楽表現をしようしているかのようです。批判的な人はこの伝統からの逸脱を問題視します。大ピアニストのリリー・クラウスなどは「もう少し普通に弾いてくれれば最高なのに」と述べています。これに対して賛成派は「まるでモーツァルト自身が弾いているかのようだ。」と絶賛を惜しまない。音楽評論家の宇野功芳氏は、この第11番のトルコ行進曲について「おもちゃの兵隊が行進するようだ」と評しながらも絶賛しています。



輸入盤、盤面傷無し 27

プラケース少しすれあり



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