「THE METROPOLITAN MUSEUM OF ART BULLETIN | VOLUME 64 |No.1
"Rembrandt and His Circle: Drawings and Prints"」
「レンブラントとその仲間たち: 素描と版画」
▼著者: Plomp, Michiel C.（ミヒール・Ｃ・プロンプ）
▼2006年発行/48 pages
▼【画像⑨】
『最後の晩餐 (レオナルド・ダ・ビンチの模写）』
レンブラントが28歳の時に赤いチョークで描いた、通常より一際大きな素描は、ミラノにあるフレスコ画《最後の晩餐》の初期の版画の複製に忠実に倣っています。しかし、そのまま模写するのではなく、人物をすべて描きなおしキリストの言葉に対する使徒の反応をより激しく表現しています。さらに人物たちを凝縮して描くことで、表現力と物語性を追及しています。レオナルドの《最後の晩餐》はレンブラントの想像力をかき立てた重要な作品で、この模写は彼が《最後の晩餐》を基に描いた3点の素描のうちの1枚です。
▼【画像⑯】
ふたりの盗賊と十字架に架けられたキリスト:『3 本の十字架』
レンブラントによる最も優れた作品のひとつである《3本の十字架》は、彼の“版画家”としての技量の“頂点”を示す作品です。銅版にすべてドライポイントで描くことで、レンブラントはポイント（ドライ ポイントニードル）で表面を引っ掻いてできたバー（銅のささくれ）によるインクの滲みのビロードのような質感を活かしています。さらに、インクのつけ方を工夫したり、異なる支えを使って刷ることによって、ひとつひとつ違う作品を作りました。この作品では、銅版に故意に残したインクにより、十字架の右下の人物像がぼやけており、右端では厚く塗ったインクで潅木が見えなくなっています。羊皮紙（動物の皮）に印刷することにより、構図に柔らかい光を与えています。

⭐専門用語以外は平易な英文で書かれています。美術愛好家なら辞書なしで読めると思います。レンブラントは好きな画家の１人で、カタログや解説書等は何冊も所蔵しておりますが、本書は中でも優れた一冊で、殆んど新品同様の美品です。